最近ジメジメとしている富山です。
全国のBNR32オーナーは、こんな日はデフ交換について考えているものです・・・?
さて今回は、今さら他人に聞けないデフの仕組みについて書いてますので、すでにデフ交換済みの方や、この道のプロの方はスルーしてください。
そもそもデフってなんなの?
デフは駆動系のギア仕組みで、ディファレンシャルギアの略称です。ディファレンシャルギアには、機械式LSDとオープンデフ、その他(トルセンLSD、ヘリカルLSD、アクティブLSDなど)様々なタイプがあります。社外デフで主に使われているのは機械式LSD(以下LSD)で、見た目はクラッチディスクが複数枚が重なって筒状のケースに入っているタイプものです。
LSDはリミテッド、スリップ、ディファレンシャルの頭文字をとった略称で、英訳するとロックするギアを限定的にスリップさせて解放するという仕組みです。このギアをロックするタイプのLSDという仕組みに対して、ギアを全くロックしないデフはオープンデフと言われているものです。
デフはLSDとオープンデフの2つの仕組みを大まかに知ったら、十分ではないでしょうか。
デフは何処にあるん?
デフは車の何処にあるのかというと、多くの場合は車両の腹側、両タイヤの軸線上にあるデフケースに収まっていて、ドライブシャフト側の左右のギアと、プロペラシャフト側からのファイナルギア、デフ機構の本体も一緒にハマってます。ギアを3方から組み合わせたディファレンシャルギアが収納されている部分がデフケースです。
LSDもオープンデフも、このデフケースの中にどちらか一つが納まってます。
BNR32のフロント側は、エンジンオイルパンの横にありドライブシャフトが刺さっています。リア側はプロペラシャフトの後端に、らっきょみたいな形のデフケースがあります。
デフのタイプを確認したい!
BNR32に搭載されてるデフの中身ですが、下回りのデフケースを眺めても中にどんなデフが入っているかはわかりません。ケースにマジックなどで中身が書いてある場合は目安になりますが・・・。もし自分の車のデフの状態を簡単に調べたい場合は、リフトアップした状態で、右でも左でも片側のタイヤを回してみると良いかもしれません。
もう片方のタイヤが、同じ方向へ回るならデフがロックしているのでLSDが入っています。左右逆にタイヤがまわるなら、タイヤが接地していなくてもロックできないくらいに消耗しているLSDであるか、もともとオープンデフです。
デフが誕生した理由は・・・
デフが誕生した理由と基本的な仕組みは、もともと馬車など車輪がついた乗り物が旋回しやすいよう、左右の車両の回転速度を機械的に調整する仕組みとして誕生しました。車軸についたギアの組み合わせで、旋回方向の内側のタイヤは遅く、外側のタイヤは早く回るようにして旋回性能を上げることができたのです。
それはディファレンシャルギアから伝わる駆動力が、外側が大きく、内側が小さいということでもあるんですが、構造上の弱点としてこのデフは車輪のグリップ力の少ないほうへ駆動力を配分するという性質があり、片輪だけがグリップすると、もう片方に100%の駆動力を分配するんです。サーキットなどでコーナーで外側タイヤに荷重をかけると、グリップの抜けている内側タイヤに大きな駆動力を分配するので、内側の車輪はスリップし外側の車輪は、駆動力が少ない状態でグリップ維持しながらコーナーを曲がることになります。そう、お気づきのとおり駆動力のロスが非常に大きいデフです。
このデフがオープンデフです。
逆にもしコーナー中の左右のタイヤの駆動力が同じだとすると、旋回するときの走行ラインが外に膨らんでしまい旋回性能は低くなりますが、左右同じ駆動力が車輪に伝わることで、グリップ力は維持しやすく、速度が高いコーナーリングが実現可能になります。
同時にエンジンからの駆動力を100%とした場合、コーナーで加重変化が起きた際に、外側タイヤに70%、内側タイヤに30%の割合など、タイヤへの駆動力100%を適切に左右のタイヤに分配することができれば、駆動ロスがないうえに、外側の車輪を内側より早く回すことで曲がろうとするのでコーナーリングスピードは、より高くなります。
このデフがLSDです。
整備された道幅の広いサーキットを、より速く走行することを考えたら、オープンデフよりも、LSDのデフ構造のほうが駆動ロスを少なくラップタイムも良くなるのは想像しやすいと思います。
BNR32の純正デフってどうなってるん?
BNR32純正デフですが、リア側にイニシャルトルクの低いLSD、フロント側はオープンデフですのでノーマル状態だとデフがロックする効果はほぼ期待できません。またリアのデフケースに収まる純正LSDは消耗品ですので、新車から一度も交換してないと、現在では全くロックしないオープンデフ状態になっている可能性が高いです。このデフが劣化した状態でサーキットを走ると、LSDは駆動軸をロックできず、中のギアが滑ったまま走ってるようなものですので、一周走るまでにエンジンからタイヤまで動力が伝達しない「駆動ロス」が多数発生しています。
たとえばオープンデフ状態のままサーキットで走行すると、スピードが乗るコーナー進入や、立ち上がりのアクセルオンで、加重のかかっている外側タイヤには駆動力がかからず、内側タイヤだけに駆動力がかかってスリップするので、オーバーステア挙動になったり、ハンドルを切ってないのに駆動力が分配され無いほうに舵角が切れ込むトルクステアも発生しやすくなります。トルクステアはストレート加速時にも、右に左にステアリングが持っていかれるので姿勢が不安定になりけっこう危ないんです。
さらに先述したようにオープンデフには構造上の弱点があって、もしも片輪だけにトルクがかかっている状態で、反対側のタイヤが宙に浮いてしまうような姿勢になった場合、シケインなどで縁石に乗ったりしたとき・・・。接地しているはずのタイヤから駆動力が抜けて空転しているほうへ駆動力が全部移動してしまうという弱点があります。そんなとき一瞬かもしれませんが、立ち上がりに向けて頑張ってアクセル踏んでいても加速しない謎が発生します。
特にブーストアップなどパワーアップしたBNR32で、サーキット走行するときはオープンデフ状態ではお勧めできません。※自分でも確認済みですので鈴鹿テスト走行編で動画確認できます。
イニシャルトルクとは?
デフのロックするスピードを早める力の強さを表し、多くの場合はデフ本体に組み込まれているクラッチのようなプレートの材質、枚数、スプリング強度、オイルなどで各メーカーで設定値が異なります。デフのイニシャルトルクが高いと、アクセルオンやブレーキ時に素早く作動して大きな力でロックして、イニシャルトルクが低いとゆっくり作動して弱い力でギアをロックします。
イニシャルトルクの高いデフは、ドライバーが乱暴なペダルワークを行うと、ロックとスリップを繰り返すので、車がガッコンガッコンして恥ずかしい思いをします。アクセルの反応が良い低速域では特に運転がしにくくなるかもしれません。
またイニシャルトルクが高いデフは作動音も大きいので、駐車場などでハンドルを一杯に切ると、周囲にわかるくらいパキンパキッと大きな音がでて、おばさんや子供たちにあの車壊れてるわぁ・・・みたいな冷ややかな目で見られます。このときけっこうな衝撃がステアリングに伝わるので、社外デフを知らないとドライバーは壊れたかも!ってビビるかもしれません。
デフの理論は概ねどのメーカーも一緒ですが、製造メーカーによって構造やイニシャルトルクなど設計は異なります・・・。現在ではBNR32用のデフも、20年前のデフと異なり、バキバキ音が出ないように工夫された商品が多くなってるようですよ。デフの作動音って、車が壊れてるみたいで気になる人は多いんでしょうかね。
近年では、カーボンなどの新素材を使用してイニシャルトルクをかなり高くした製品もあるみたいですね。
社外デフに交換するメリットは?
社外デフに変更すると、イニシャルトルクが高くなり、デフのロック率が高まります。これは理論上、ブレーキ進入や立ち上がり加速の安定性が圧倒的に良くなるんです。付け加えると鈴鹿のようなコース幅が広いサーキットでは、加速性能もラップタイムもおそらく伸びること間違い無し!逆に地方の小さなサーキットでは、BNR32にイニシャルトルクの高いデフは、足かせになる場合もあるかもしれません・・・。
ここで。
自分はNISMO信者ですので、当然NISMOのデフをブッコミ紹介するわけです。
↑NISMOのGT LSD-proは、駆動輪であるリア側が2WAYと1.5WAYの2種類ラインナップ。フロント側は、1・5WAYのみラインナップになります。
この〇〇WAYについて簡単に説明すると、2WAYは加速・減速で同じようにロックする仕組みで、1.5WAYは加速のときにはロックして、減速のときは加速時の約半分ロックします。1WAYは加速時にのみロックしますが、ニスモからは出てないようですね。1WAYや1・5WAYのようなロック率を下げたものがあるのは、先述した旋回性能を高めるためですね。
ドライバーは自分の乗り方によって、運転にあったデフを選択することができます。
もしもイニシャルトルクの高い2WAYデフを選択するなら、ドライバーはアクセルとブレーキ操作によって、デフのロック率をコントロールすることができ、コーナー中に意図的な姿勢変化を起こしやすくなります。アクセルやブレーキに対しての反応速度も速く、操作がシビアになるってことですね。イニシャルトルクが通常の3倍!なら、ドライバーの反応速度も3倍必要ってことでもあります…。
そう3倍です!
ドリフト選手は、こういう純正比3倍ぐらいの高いイニシャルトルクの製品を使って、ニュータイプ並み⁉︎の反応速度で、あえてラフなペダル操作で姿勢変化させるみたいですが、一般兵な俺はサーキットでこれをやると大変に危険な操作といえます。
一般兵がニュータイプ専用デフを搭載するとコーナーでタコ踊りしそうですよ。イニシャルトルクが低ければ、多少ラフなペダル操作でも安定性を損ないませんので、タコ踊りも小さく少なくなります。そのため一般兵用にイニシャルトルクが低めのデフが、現在でも数多く販売されてるのはそういう理由です。
イニシャルトルクが低いって言っても社外品はどれも純正LSDの2倍以上はイニシャルトルクありんじゃないでしょうか。ロック率は十分です。
またBNR32はコーナーでGセンサーによりアテーサが動くことも多いので、前輪も駆動しているんですが、前輪も加重のかかっている片側のみ動力が伝わることになりますのでパワーロスして本来非効率になります。フロントデフを導入する必要性は十分にありますが、BNR32の場合はメーカーがサスペンションの基本設計上、あえてフロントデフをオープンにしてステアリングでコーナーを曲がりやすくしてると言われています。ですが、それは純正サスペンションで純正足回りセッティングのままのBNR32にとって!であって、サーキットで走行するためにガチガチのバネレートの車高調や、フルピロ組んでたり、ネガティブキャンバーを3度以上で決めてる車両には当てはまりませんよね。
BNR32乗りの方は、自分の乗り方にあったデフを選択して入れちゃったほうが、コーナリングは安定してラップタイムにもつながるんじゃないでしょうか。
最近の電子制御付きのLSDは?
近年の最新車両は、オープンデフとLSDのいいとこ取りしているようですよ。デフに電子制御を加えて、左右輪に独立してイニシャルトルクを配分して、コンピュータがデフを制御しているようです。ドライバーのペダルワークの入力や、車両の各部からのセンサー入力からコーナー中の姿勢状態をコントロールするようですね。
コーナー中のブレーキ、デフ、アクセル、ミッション、エンジンを連動して電子制御を行えば、コーナー中にタコ踊りしにくい最適なトラクションコントロールができるわけです。すごい時代ですね。
結果、僕らが愛するNISMO製の機械式デフより圧倒的な安定感が得られます。
人間が冷や汗かきながら身につけた技術で車をコントロールするよりも、コンピュータにコントロールさせたほうが、リスクもなく最も効率的な制御をするわけです。
古き良き車を愛する俺は、そんな電子制御の車は面白くないわけです(笑)
ちょっと惜しいですが、BNR32に電子制御の社外LSDは無いようです。
オープンデフ状態で、鈴鹿走ってみたんだけど・・・。
さて話戻りますが、自分のレストアしたBNR32は、リフトアップでのチェックでデフロックしない状態でした。そのままサーキット走行してみたんですが、コーナー中にアクセルオンしても前に進みませんでした。さらにコーナー進入のブレーキで挙動が不安定になるので、パーシャル状態からハンドル切らずに一回アクセルオンで、アテーサ効かせてアウト側にラインを安定させて進入してました。それでも先読みでカウンターステアしないと、リアが動いてからステア操作したら高速コーナーでハーフスピンして飛び出し・・ました・・・。
もしリアデフが2WAYで減速時にロックされるようになると、駆動輪は左右回転差がなくなり安定して高い速度でコーナー進入できるようになります。またアクセルオンでは両輪で駆動力を受け止めますのでアテーサ&フロントデフと一緒に、車を前に押すようになることでしょう。BNR32の場合は、コーナーリング中のアクセルオンだと斜め前方向に、ラインがアンダー気味に膨らみます。
デフを入れたら・・最初に気がつくこと。
町中ではデフが効くとエンジンパワーにタイヤグリップが負けて、シュシュシュシュとタイヤが軽くスリップしながら動きます。停止時からのステア操作では、斜め方向にタイヤがスリップするんでハンドル切って曲がりにくいって感じることは皆無なんですね。もし不都合があるとしたら、最小回転半径が問われる駐車場入れぐらいでしょうか。
さほど変わりませんが・・・。
ちなみにデフがロックしないと、ハイグリップタイヤでシュシュ音はしないです。
デフが劣化すると、内部のギアの組みつけクリアランスが広がって緩んでしまっていたり、イニシャルトルクが下がっているので、頻繁にギアが滑ってロックできず、オープンデフのような動きになってしまいます。
まとめ
さて長くなってますが、NISMOのような社外デフでロック率を上げると、いい点も悪い点もあるのがわかりました。ここで一旦まとめると、いい点はコーナー進入での姿勢安定性が向上、アクセルオンでの加速性能の向上、悪い点はドライバーがコーナーリングで、ペダルワークなどで頭の向きを変えるように姿勢変化を起こす操作技術が必要で、足回りのセッティングが決まらないと立ち上がりもアンダーステアになる点です。
デフを入れて、車に姿勢変化を起こすようなコーナーリングを極めるには、イニシャルトルクの高いデフを選んで、ブレーキの強さや残し方、キャンバーセッティングなどが効果的です。
しかし初心者やアマチュアドライバーなら、デフのコントロールに慣れるまで、もしくは永遠に・・・。コントロール性能が高いニスモ製品のようなイニシャルトルクが低いタイプのデフを選択することをお勧めします。
そう・・・!
NISMO GT LSD-pro!です。
アマチュアドライバーなのに、プロを使うんですねってことは置いておきましょう。(笑)
↑フロントデフ1.5way
ニスモのGT-LSD proは、なんと3段階でイニシャルトルクを増減できる機構がついてます。イニシャルトルクを増減できるってことは、使っててヘタってきたらイニシャルトルクを上げればデフの寿命が延ばせます。さらにもし腕が上達してイニシャルトルクが足りないと感じれば、ステップアップもできるって代物ですね。
さすが我らがNISMO!
………。
さてそんなわけで今回は、デフ交換作業を富山のA-spec エンタープライズさんにお願いしました。
自分はBNR32を鈴鹿用に仕上げていきますので。前後デフを交換するんですが、BNR32は、リアデフだけでも当然交換するメリットは大きいと思います。タイトコーナーの多い地方のサーキットならリア交換だけのほうが、前後のバランスが取れて効果的かもしれません。
ここで注意ですが、デフはギアの組みつけクリアランスが超シビアで、組み方で性能と耐久性に大きな差がでます。ちゃんと組める技術があるお店じゃないと、ヘタリが早かったり、サーキット走行2、3回で破損してしまう場合もありますのでご注意ください。
富山のA-specエンタープライズの社長 荒川さんは、サーキットでタイムアタックするシルビアやrx-7、GT-Rなど国産スポーツカーに、何百回もデフを組んできたプロ中のプロですので、今回も安心してお仕事をお任せしましたよ。
※そのせいで作業を丸投げしてたので現場に行かず、画像も少ないです・・・。
↑フロント側は車載だと上を向いての作業ですので、さらに技術が必要ですね。
作業完了後のインプレッションですが、まずスタートでデフがロックすると、タイヤのシュシュ音が出るようになりました。
このシュシュシュっていうタイヤの音が懐かしいです。
バキバキ音が…?無い!?
ニスモデフは無音です。
なんで?
昔はバキンバキン言ってたやん。時代は変わるもんですな。ニスモ製だからですかね?(笑)これならファボーレやイオン行っても、アルビスやTSUTAYAに行っても、子供たちから変な目で見られませんね⁈
デフ交換結果!町中から効果絶大?!
実は今までフロントデフ交換車は経験したことが無いんですが、前後デフを変更してみて、信号待ちや低速で曲がると、ステアリングに伝わる巻き込み力が強くなってるような…。オーバー気味?フロントグリップが増してるような感覚です。
ギア比は前後一緒だし。たぶん気のせいかな?
デフ慣らしを兼ねて高速もドライブしてみたんですが、一発でわかるのはコーナーでの安定感アップです。さすが前後デフ交換は高速コーナーで違いますね。アクセル踏むとストレート並みに前に進むので怖いです。
サーキットのコーナーほど攻めてませんが・・・コーナー中にアクセルを入れても、アクセル抜いても、デフは効いてるので安定感が挙動がハンパなく安定しています。
次回!
NISMOデフ交換と一緒に、アテーサコントロールを導入するのは何故か?って理由もついでに説明してみようと思います。